自分は15年間、ある製造会社で日々やる気のないサラリーマンでしたが、異動を機に退職しました。
その後は自営/自立手段を模索しているうちに、半信半疑でパソコンで図や絵を描く勉強を始めました。
インターネットで情報を探したり、古い美術の教科書や大学の教材などの難解な文章に悩みながらの独学です。
半信半疑、というのは、幼い頃から絵を描いたり観るのは好きでしたが、パソコンで絵を描くのは邪道で実力ではないと信じていたからです。
だから出だしは困難を極めました。
しかしやがて色鉛筆を紛失したり買い足したり、絵の具が乾いてまた混ぜているうちに違う色になってしまうような、余計な気苦労がないことに気づきました。
そしてついに、今どき話題の「クラウドソーシング」で自分の腕前を試せるようになりました。
日々落選の繰り返しですが、それが皮肉にも練習につながったようです。
約半年後、自分の作品を買ってくださるお客様と出会えるようになりました。
やりとりに関しては、会社員の頃に積み上げた経験が役に立ちました。
当時たいへんな苦痛でグチばかりの日々でしたが、将来こんなに助けになるとは思いませんでした。
なんでも経験するものです。
なんとか試行錯誤しながら、それでも着実に作品を納品していけるようになりました。
ところがある日、奇妙なお客様からご注文をいただきます。
どうも的を得ません。
ご依頼の内容に心がこもってないのです。
アルファベットの単語が当初ご指定のものと異なったり、主張も一転二転します。
これが商品をご希望のお客様ご本人なら、製作を進めていくうちに気が変わるということはよくあり、こちらもそれは覚悟しています。
ただ到達点が明確なので、時間がかかっても混乱することはほとんどないのです。
 予想したとおり、どうもこの人はお客様ご本人でなく、取り次ぐ方ではないか、と気づきました。
表現は悪いのですが、金銭の授受が発生している割にはひとごとのような感覚です。
商品を要望されているご本人と直接お話できないのはじれったいものです。
そのうちに、これも注文予定だからと、他に2点、お仕事を提示してきました。
計3点を1点のお値段で承っているわけです。
さらに、このフォントがおすすめ、とかイラストはこんなかんじ、などリンクを送って指示します。
これは明日まで、と期日も指定してきます。
冷たいようですが「ここまでわかってたら自分でやれ」と、同じ職場の人なら突き返すところです。
こうして精神衛生上よくないことに関わっていると感性が鈍って他のお客様にご迷惑をかけてしまうため、思いきってその時点で指示されたものを全部提出し、自分の能力の範囲外だからと最後のメッセージを送って、ブロック設定させていただきました。
社内や近所ならこういうわけにもいかないでしょう。
クラウドソーシングの合理的で便利なところです。
先方は満足度は別にして無料で素材を入手したわけですから得なお買い物だったでしょう。
想像ですが、こうしてデザイナーさんを叩くことが多いとしたら、それはもはや商売ではなく単に脅しです。
ところで先日、デザイナーさんの中にも、海外のデザインを真似(いわゆるパクリ)する方々がいると聞いて驚きました。
そういう残念な方々が多ければ、取次店も身構えたり、デザイナーとはしょせんそういうものと敬遠した態度になっても仕方ないでしょう。
自分にいろいろ上から目線で注文してきたあの方も例外ではありません。
自分は、創作とは、尊敬して模倣するという以外は、「まねごと」とはもっとも遠い部分にあると信じていたので、かなり衝撃でした。
例のシンボルマークの件は起こるべくして起こったことかもしれません。
自分はせめて、時間がかかってもスケッチだけは自分でしようと心に決めたのでした。
人探し 探偵